無料サービスの有料化によって収益力を強化する方法
無料サービスを有料化することによって、収益を太くすることができます。
ビジネスモデルの研究として、どのような実例があるのかを見てみましょう。
■You tubeの有料化の噂
無料で始めたサービスを有料化する例は、ちらほらあります。
最近では、動画プラットフォーム最王手のYou tubeが有料化するのでは、との噂がありました。
You tube自体はこの噂を否定し、また、有料会員のみの動画閲覧をできる機能を別にアドオンするのではとの見方もあります。
広告以外にもコンテンツの作り手へのマネタイズ手段を提供し、コンテンツの作り手の拡大と発展を目指す動きでしょうか。
■ヤフオクの有料化
無料サービスから有料化した例としては、Yahoo!オークション(ヤフオク)が有名でしょう。
1999年に登場したヤフオクは当初、無料でした。
リリース直後のヤフオクは無料アカウントによって簡単に出品できるため、シェアが急速に拡大する一方で、詐欺やいたずら出品が横行しました。
そこで、Yahoo!JAPANはオークションの利用には有料の会員登録が必要になった。
(2015年9月現在は月額の会費のみで利用できるが、出品にシステム利用料や落札額からのレベニューシェアを求められる期間があった)
Yahoo!JAPANの言い分としては、有料化する代わりに、そのお金で詐欺にあったユーザーへの保証制度を設ける、というものがあった。
2000年有料化された当初は、利用者が少なくなるのでは?との危惧もあったが、他のオークションサービスと比較して、圧倒的なシェアのあるヤフオクの牙城は一切揺るがなかった。
オークションの様なマッチングビジネスでは、やはりマッチングされるユーザーの数が最大の価値であり、その価値が少額の月額利用料を上回ったのだろう。
ヤフオク有料化からの示唆
・マッチングビジネスではマッチング対象者の数が最大の価値を生む
競合を寄せ付けない規模を囲い込むことで、有料化しても顧客はついてくる
・有料化で得た資金は、保証制度などのユーザーが長期的に安心してサービスを利用できるための仕組みに投資すべし
■カイポケの値上げ
SMSが運営する介護事業者支援ソフトウェアのカイポケも値上げを実施したサービスです。
無料サービスの有料化ではなく、格安を売りにしたサービスの高額化です。
カイポケは保険事業者向けに、
- 煩雑な保険請求を簡単にできること
- 他社よりも格安であること
を売りにシェアを拡大しました。
シェアを拡大した後、カイポケは機能拡張とともに値上げされました。
値上げをしたことにより、利用者減を超えて売上が拡大したようで、IRC資料を観る限り順調に成長しているようです。
カイポケの値上げは選択制ではなく、強制的な全ユーザーへの値上げだったため、ユーザーの反対意見はそれなりにあったようです。
値上げを選択式にすることもおそらく可能だろうが、
- 提供側としては、サービスをシンプルな形で保ちたい
- 強制値上げの方が仕方なく使い続ける人の分の収益が上乗せされそう
なので、一律値上げが効率性、収益性ともに優れているのだろう
また、カイポケの場合も、「他社より格安」という価値でユーザーを囲い込んだあとの値上げという点がヤフオク有料化と同様、重要な点である。
ヤフオクの様なユーザーの数によるサービス価値上昇はないのだが、スイッチングコスト(手間)を嫌がるユーザーは一定数いるのだろう。
カイポケ値上げからの示唆
・値上げ(高額化)する場合は、高機能化などの大義名分が必要
・囲い込んだ後にスイッチングコストを頼りに値上げする
■ビジリーチの利用料徴収
ビジリーチは高収入者層をターゲットにした会員制の人材紹介サイトです。
2009年に開設されており、一部機能を利用するためには求職者も月額会員費を課金する必要がある点に特徴があります。
また、ビジリーチの特徴の一つとして、求人募集中の企業が「直接ユーザーにダイレクトメッセージを送れる」という点があります。
これにより、企業はエージェントを通さずに的確な人材に直接接触することができます。このことが企業側に与える大きな価値としては、エージェントが紹介すらしてくれない企業でも求人者と接触するチャンスがある、という点です。
転職エージェントは数ある求人の中から、
・求人者が採用される可能性のある企業
・求人者が内定を受諾する可能性のある企業
を紹介します。それが効率的にエージェントの収益を増やすからです。
このエージェントのフィルターから漏れた企業は従来、求職者に接触することすらできませんでした。
しかし、ビジリーチのダイレクトメール機能を使用すれば、このような企業でも求人者と接触するチャンスがあります。
そこにビジリーチのサービス価値があるのです。
ビジリーチのこの企業側から求人者へのダイレクトメール機能は無料だったそうですが、現在は有料化されています。
この料金はデーターベース利用料という名目で徴収されています。
ビジリーチは「年収1000万円前後層に向けたハイクラス求人サイト」としてWebマーケティングで多数の求職者を集めました。
SNSの普及とあいまって、年収別(卒業大学や在職企業)でターゲティングしてのWebマーケティングは効率が非常に高かったのでしょう。
この求職者のデータベースの利用を当初は無料で企業側に提供し、企業側も積極的に使用します。サービス内に求人情報が溢れ、利用者も満足し、サービスはさらに拡大します。
そして、ハイクラス層のデータベースが完了した時点で、データベースの利用量を有料化します。ヤフオクと同じく、囲い込んだ後の有料化です。
IRのデータ等はありませんが、積極的に新規事業を推進している様子からビジリーチの収益は順調に拡大しているのではないでしょうか。
ビジリーチの利用料徴収からの示唆
・やっぱり、囲い込んでからの「有料化」が鉄則
・囲い込むための戦略を考えよう
■まとめ
ビジネス・ディベロップメントで考える必要があるのは、
- どのように価値を生み出すか?仕組みを作るか?
- そして、その価値をどうやってお金に変えるか?
です。
生み出した価値をお金に変えるために、今回のケースは参考になりそうです。
今回のケースだと、やはり
無料(格安)で集めて、あとで有料化する
という方法が強いようです。