IT/ソフトウェア業界でのビジネス職キャリア

IT/ソフトウェア業界でのビジネス職キャリアを考える材料を発信していこうと思います。

代替品の脅威はどこで見誤ったか?

2012年のケース分析

「戦略分析ケースブック2」は一橋大学MBAワークショップグループが2012年に12月に著したケース分析をまとめた本です。

 

ポイントは、2012年、すなわち今から3年前にまとめられた本です。

この中に、「ソーシャルゲーム業界」の分析があります。

当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していた、ソーシャルゲーム業界(具体的には、GREEDeNA)に対して、高い利益率と市場シェアは維持できるのか?を考察しています。

 

このケース分析の答えは「維持できます」である。

ソーシャルゲーム業界は、代替品の脅威が生じにくく、また、サプライヤー側からの交渉力も弱く、利用者のニーズを的確に捉えており、今後も繁栄する、とされています。

 

これは、2012年の見解です。

皆様、ご存知の様に、この業界は、その後、台頭するネイティブアプリマーケット(iOS/Androidストア)や2012年2月にリリースされたパズル&ドラゴンや2013年9月にリリースされたモンスターストライクなどに大きく市場シェアを奪われ、GREEDeNAは大きく売り上げを落としました。

 

なぜ、予想は外れたのか?

つまり、予想は外れたのです。

予想が外れること自体は、人間よくあることです。

しかし、このようなケース分析が何を見落としていたのか?を考えることは、経営を考える上で重要なのではないでしょうか?

 

見落とした代替品の脅威

この書籍では、スマートフォンのアプリマーケットについて、きちんと触れられています。

ソーシャルゲーム・プラットフォームを含めた4つのゲームプラットフォームは、ゲームを遊ぶ状況が似ているため、一見すると代替関係が存在しそうに見える。

しかし、これらの代替品の脅威は、小さいと考えられる。

 著者は、アプリマーケットが脅威ではない理由として、以下の点を上げている。

なぜなら、まず第一に、フィーチャーフォンのキャリア公式サイトと、スマートフォンのアプリマーケットについては、すでにそこで人気となっているゲームを取り込みつつあるからである。他のプラットフォームで人気のソフトをグリーやDeNAが引き抜きで切る理由は、ソーシャルゲームプラットフォームの方が、既存のアプリマーケットなどよりも高い収益期待を抱かせるからである。

脅威ではなかった代替品はなぜ脅威となったのか?

それでは、なぜ脅威とは見なされていなかったアプリマーケットが、結局はソーシャルゲーム業界を引っくり返したのか?

ネイティブアプリ(アプリマーケット)がユーザーがゲームに求める動的な演出やゲーム性を提供できたからである。

ブラウザベース(HTML)で作られたソーシャルゲームでは提供できない価値を提供できたのだ。

2012年の時点では、そのネイティブの利点を活かしたゲームを世に出している会社は少なかった。

パズル&ドラゴンは極めてキャッチーなゲーム性をぬるぬる動くネイティブアプリがリリースされて初めて、代替品の脅威が見て取れるようになったのだ。

なぜ、気づけなかったのか?

結局、経営学を知ろうとも(本ケース分析はポーターの競争の戦略の5Forceをベースに考察されている)、テクノロジーを理解していないと、ITセクターの未来は読めないのである。

 

この業界はテクノロジーの発展が早く、そして、サービスやプロダクトはそのテクノロジーの上に築かれる。テクノロジーの上に経営が乗っている場合もある。

 

テクノロジーと経営は同じレイヤーで議論されるべきものなのである。